【Album Review】Godspeed You! Black Emperor - F♯A♯∞【Rock】
「終末」や「絶望」という二文字がこれほどまでに似合う作品は、この作品より他に見当たらないと個人的に思っている。
「The car's on fire, and there's no driver at the wheel. And the sewers are all muddied with a thousand lonely suicides, and a dark wind blows(車が燃えている。そこにはハンドルを握る運転手は居ない。下水道はすべて千人の孤独な自殺者で汚れ、暗い風がただ吹き荒れる)」といったような独白から始まるGodspeed You! Black Emperorのデビュー・アルバムは、前にも後にも見られないような、とてつもなく壮大な絶望感を聴者に齎してくれる。
曲数は3曲と少ないが、非常に長尺で密度の濃い三曲が並んでおり、そのどれもが暗く、陰鬱で、絶望的な雰囲気を帯びている。
バンドは後にも「Slow Riot for New Zero Kanada」や「Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven」などといった傑作を出すが、この「F♯A♯∞」はそれらよりもメロディアスな部分は抑えられ、やや実験的ではあるものの、その分非常にダークな一作となっており、救いようのないぐらいのどす黒い印象が全面的に押し出されているようにも思える。
その一方で、後の作品にも見られる耽美的な瞬間も多く見られ、荒涼とした音像の中でも、しっかりと美しさを見せることに成功しており、それも相まって深みのある作品になっているように感じられる。
当時のバンドが見せた格差社会への怒りや憤りが一つの作品に結実したというのは、非常に興味深いトピックであり、後の作品でもこのように格差社会への憤りをぶつけるといった体裁を崩さずに作られているが、この作品は後のバンドのどの作品よりも陰鬱で、終末感を憶えるものであると個人的に感じる。
終末に鳴る音楽はきっとこの作品のように、絶望的でありながらも、局所で美しさを覗かせてくれるようなものなのだろう。
具体的に何が起こっているのかを完璧に理解している訳ではないが、そのぐらいに考えさせられるものがある作品なのだと言うことは確かである。
1.The Dead Flag Blues - 10/10
2.East Hastings - 10/10
3.Providence - 10/10
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